基本構想

2019年(平成31年)、日本の医学・医療はどう変貌を遂げているだろうか。
再生医療、遺伝子医療などの先端医療はすでに日常診療の中へ組み込まれつつあり、人工知能、医療用ロボットなどの最新医療機器は開発と普及が進み、遺伝情報に基づく治療選択はさらに拡大しているだろう。一方、超高齢・人口減少社会に対応できるよう社会保険制度を改良し、人生の最終段階における医療に対応できるよう医療社会環境を整備しなくてはならない。医学は進歩し、医療は生きている。それには生涯を通じた医療者教育、価値観を踏まえた各医療者の適正配置、多職種による連携がますます重要になることに加え、一般市民への教育、一般市民からの協力も欠かせない。さらに、グローバル化する日本の医療を踏まえ、「第30 回日本医学会総会2019 中部」ではこれまでの日本医学会総会であまり取り上げてこなかった国際的なテーマにも取り組むこととした。

基本構想

1. 医学と医療の新展開

我が国の基礎医学研究は世界に誇るレベルにあり、同じく世界最先端を行く科学技術と融合させることで、例えば人工知能、医療用ロボット、イメージングなどに代表される医療技術革新において世界をリードすることが可能と思われる。我が国の高い技術力や製品開発力、とりわけ中部にとってはものづくりを基盤とした強い国際競争力を存分に発揮する格好の機会となろう。また折しも我が国では日本医療研究開発機構(AMED)が設立され、産・官・学を挙げて再生医療やゲノム医療といった先端医療開発に取り組んでいるところである。 本医学会総会ではこれら医学・医療に関する最新情報を医療関係者や一般市民が共有する場を提供したい。

ヒトゲノム情報の解読に続いて、遺伝子多型と疾患罹患性・薬剤感受性との相関が精力的に解析されてきた。今後はprecision medicine、すなわち精密な診断法に基づいて患者を個別化し、個々の患者に最適化した治療法を確立する方向へ医療は進化していくものと思われる。そのためには、分子診断の精度向上、 疾患登録・管理の徹底、バイオバンクの充実、ビッグデータの解析などの準備をしっかりと進めていく必要がある。特にがん、難病、認知症などの領域は重要であろう。これらの課題について十分に議論したい。

2. 社会とともに生きる医療

2025年、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となり、医療給付費と介護給付費を合わせて70兆円を超えると試算されている。健康長寿社会の形成に向けて、世界に誇る我が国の国民皆保険制度をどう維持していくか、介護保険制度をどう構築していくか、いち早く答えを見つけなければならない。一方、国民それぞれが最期の時をどのように迎えるのか、即ち人生の最終段階における医療のあり方も日頃から考えておかなければならない。これら超高齢化社会の抱える諸問題を解決するため、緩和医療、在宅医療、チーム医療、予防医療、生活支援、健康増進、患者会活動、ボランティア活動といったさまざまな視点から、医療者と一般市民が共に知恵を絞る必要がある。

医療・介護・福祉といった分野はマンパワーによって成り立つところが大きい。それ故に、少子化も同時に進行する我が国では、例えばICT(information and communication technology)を活用した医療ネットワークの整備、携帯可能な小型医療機器の開発、介護ロボットの導入など、人的省力化を進めつつ安全性をより高めた医療・介護・福祉を提供していくことも必要だろう。超高齢・人口減少社会における新しい医療の在り方について国際化を含めて議論を深めたい。

3. 医療人の教育と生き方

大学は特徴ある教育、研究を遂行し、様々な分野において活躍する人材育成が期待されている。国立大学においては今後「世界最高水準の教育研究」「特定の分野で世界的な教育研究」「地域活性化の中核」の3 グループに分類されていくという。国立大学等への運営費交付金や私立大学への経常費補助金が年々減額されていく中、今後の大学・大学院における教育、研究はどうあるべきか。医学部も例外ではなく改革が求められている。また開業医・勤務医・専門医・総合医・研究医・研修医・産業医のそれぞれをどう育成し、医師偏在をなくすか、女性医師・シニア医師の活躍の場をどう広げるか、多様化していくワーキングスタイルにどう対応していくかについても良く考える必要がある。

医学会総会は、例えば内科医と外科医、臨床医と基礎医学者、病院勤務医と家庭医など、多様な場で活躍する医師が時間を共有する中で、それぞれの専門領域を超えた知識を得る貴重な機会である。そのような生涯学習の場の提供が医学会総会の重要な役割のひとつであると考えている。また医療は医師だけでは成り立たない。看護師、薬剤師、検査技師、放射線技師、理学療法士など医療専門職の育成と同時に、医療従事者間の協力・連関による超高齢社会にふさわしい医療環境をどう作り上げていくかということも重要な課題である。医学会総会の場で多職種による議論が期待される。

4. グローバル化する日本の医療

日本医学会総会ではこれまで国際的なテーマをあまり大きくは取り上げてこなかった。しかし訪日外国客は年々増加し、2014年は全世界から1300万人、特にアジアからは1000万人が訪日した。国際的な経済連携は一層進み、世界、取り分けアジア諸国との人的、物的、制度的交流はより深くなり、日本の医療の国際貢献のあり方が問われるだろう。同時に、今後益々グローバル化していく我が国において国民皆保険制度(universal health coverage)を守りつつ医療をさらにどう活性化していくのか、社会とともに幅広く議論してゆくことが期待される。

日本の新しい医療技術や医療機材を世界に発信することは、国の重要な施策のひとつである。したがって世界に通用する医療産業と医療人の育成は医学会にとって重要な課題であり、「第30回日本医学会総会2019中部」の基本的な柱のひとつとして取り組みたい。

以下より基本構想がダウンロードいただけます。

基本構想

主催

日本医学会

主務機関

名古屋大学医学部、名古屋市立大学医学部、藤田保健衛生大学医学部、愛知医科大学、岐阜大学医学部、三重大学医学部、浜松医科大学、金沢大学医学部、金沢医科大学、
福井大学医学部、富山大学医学部、信州大学医学部、愛知県医師会、岐阜県医師会、三重県医師会、静岡県医師会、石川県医師会、福井県医師会、富山県医師会、長野県医師会